研究概要 |
強い相互作用を支配する法則は量子色力学であると考えられており、その定量的研究は素粒子物理学の最も重要な課題の一つである。これを可能にしたのが格子量子色力学(格子QCD)であり、計算機の発達とともに数値シミュレーションにより物理量を定量的に求める方法が飛躍的に進歩して来た。特に動的クォークの効果を無視したクエンチ近似においては、大規模な数値計算が高統計で出来るようになり、種々のハドロン行列要素の連続理論での値が求まっている。しかし、これらの計算は近似計算であり、計算されたハドロンの質量スペクトルは実験値から5-10%程度ずれている。最近2フレーバー(u, dクォーク)の動的クォーク効果を取り入れた研究が行われ、このずれが半分以下になることがわかってきた。我々の研究の目的は、物理的に最も重要な(2+1)フレーバー(u, d, sクォーク)の動的クォーク効果を取り入れた格子QCDの研究を行ない、クエンチ近似に起因する系統誤差を排除しハドロン質量スペクトル等の物理量を求める事にあった。具体的には、(2+1)フレーバーQCDの大規模数値シミュレーションを格子間隔aがa【approximately equal】0.1fmおよび0.12fmの二つの格子上で行なった。これらの格子上で計算された物理量に格子間隔の2乗に比例した格子間隔依存性があると考え、a=0への外挿から物理量の連続理論での値を評価し、プレリミナリーではあるが実験値と矛盾しない質量スペクトルの値を得ることが出来た。またすでに得られている2フレーバーの動的クォークの効果を取り入れたゲージ配位を用いて、現象論的に重要な種々のハドロン行列要素の研究も行なった。
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