研究概要 |
従来,ニュートリノの質量の起源に関して,シーソー質量説は大統一理論の枠組みに組み込むことが可能であるのに対して,輻射質量説は超対称性大統一理論に組み込むことは不可能であると言われてきた.しかし,それは原理的に不可能な問題ではなく,実際に,超対称性大統一理論の枠内で,陽子崩壊を抑えたままでニュートリノ輻射質量を与えることが可能であるということを,初めて実際に例証することができた[アメリカ物理学会誌Phys.Rev.D68(2003).].しかし,原理的に可能ということを示したものの,このモデルでは,実際に観測されている太陽および大気ニュートリノからのニュートリノ質量差および混合の数値関係を統一的に与えることはできなかった(むろん,シーソー質量説においてもそれはまだ成功していない).そこで,この基本的アイディアを受け継いで,翌年にはPhys.Lett.誌[B574(2004);B595(2004)]に,通常のSU(5) 5*+10の物質場と5*+5のヒグス場に加えて,更なる別の5*+5の物質場(ヒグス場ではなく)を仮定するモデルを発表した.このモデルにより,観測されるニュートリノの質量と混合を与えることができるようになった.しかし,まだ理論に含むパラメターが多い.よりシンプルな統一理論として完成させるには,更に何らかの法則性が存在すると思われる.2年間の本研究により,従来の定説に反して,ニュートリノ輻射質量説は統一理論の枠内で取り扱い可能となり,本研究の目的は達成することができた.その結果,今度は新たな研究課題「ニュートリノだけでなく,クォーク・レプトンを統合して,いかなるフレーバーについての法則性が存在するのか」が見えてきた.平成16度はこの問題にも多くの時間を割き,重要な研究成果を得た[Phys.Rev.D69(2004);Phys.Lett.B607(2004);Phys.Rev.D71(2005)].
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