研究概要 |
正二十面体相準結晶の散漫散乱分布の異方性や温度依存性を詳細に広い温度範囲で実験的に研究し,それによりフェイゾンの形や種類の解明することである。今年度は,そのフェイゾン形を決めれば,理論であるHuang散乱計算の正二十面体準結晶に適用し,実験結果と直接比較できる計算図形を書かせるプログラムを作成することができた。 Cu-Ga-Zn正二十面体相準結晶の作成から行っているが,準結晶の完全度がすごくいいためか,軸立てのラウエ写真の結果,従来のAl-Pd-MnやAl-Cu-Feとは異なり観測軸が,数度ずれただけで,ラウエ写真から対称性は発見できず,想像以上に新P型正二十面体相と従来のAl-Pd-MnやAl-Cu-Fe等のF型正二十面体相の差が大きいことが判明した。X線散乱にダイナミカルな効果が大きくkinematicalな理論の下のHuang散乱では不十分であると思われる。この結果を考察すると,Cu-Ga-Zn正二十面体相準結晶中の散漫散乱実験よりもダイナミカルX線回折実験を行う必要があるものと推察される。Al-Pd-MnやAl-Cu-Feの実験で得られた散漫散乱はこの3種のHuang散乱各々では説明できないことがわかっている。特にランダムフェイゾンもこの置換型欠陥の一種と考えられるが,ランダムフェイゾンのような欠陥はそう単純でないのかもしれない。 もう一つの研究である光電子分光の実験を行い,Mgの酸化の影響が著しく研究に手間どったが,次のような興味深い結果を得た。 (1)Cu-Ga-Zn-Mg正二十面体相準結晶は,Fermi面近傍に深さ0.6幅0.2eV程度の偽ギャップが存在する。 一方Cu-Ga-Zn近似結晶はFermi面近傍に偽ギャップが存在しない。
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