研究概要 |
充填スクッテルダイトはRT_4X_<12>(R=希土類;T=Fe,Ru,Os;X=P,As,Sb)と表され,空間群Im-3(T_h^1,#204)を持つ体心立方格子である。原子位置は,Rが(0,0,0),Tが(1/4,1/4,1/4),Xが(0,u,v)であり,uとvを内部パラメーターと呼ぶ。 1.結晶場と電子構造の内部パラメーター依存性 Rイオン位置は立方点群T_hであり,従来用いられていた立方対称点群での結晶場の表式に新たな項が加わることを報告していた。今回は,この項の内部パラメーター依存性を点電荷模型で調べ,解析的表式を得た。 希土類イオンを除いたスクッテルダイト型2元化合物T'X_3(T'=Co,Rh,Ir)の電子構造を系統的計算結果は既に報告してある。元素の組み合わせにより半導体,零ギャップ半導体,半金属となるが,内部パラメーターの値により整理できることを未した。CoAs3において作為的にuとvを変化さて計算し,具体的に示した。 2.強磁性充填スクッテルダイトの電子構造 強磁性磁気秩序を示すEu系やYb系の電子構造を計算し,安定な強磁性基底状態を得た。アルカリ土類充填スクッテルダイトでも強磁性状態を仮定して電子構造を計算し,Fe-Sb系で安定な強磁性基底状態が得られた。 3.PrRu_4P_<12>低温相結晶構造を持つLaRu_4P_<12>の電子構造 PrRu_4P_<12>は63Kで金属-絶縁体転移を生じ,低温側で結晶構造が歪み,Prサイトが2種類に分かれる。各サイトでのPrイオンの結晶場分裂が測定されており,異なるレベルスキームと報告されている。低温相での結晶構造を仮定したLaRu_4P_<12>の電子構造を計算し,La-f軌道とP-pバンドとの混成を詳細に調べた。この混成は,対称性からサイト依存の選択性を持つことがわかり,これがPrサイトごとに結晶場が異なる原因の一つと考えられる。
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