研究概要 |
NMR分光器の整備 本研究計画を実施するにあたり,磁気・電荷秩序状態のNMR測定を行うために,5〜220MHzの広帯域を持つNMR分光器の製作を行った。 バナジウム酸化物における電荷秩序 電荷秩序転移を示すα'-NaV_2O_5のuniform相について,核磁気緩和率の測定を行い,スピンダイナミクスを調べた。結晶構造から予想される低次元的振舞いを観測したが,電荷ゆらぎとの関わりを含めた理解は,今後の課題である。 バナジウム酸化物における強磁性 フラストレート構造を舞台にした絶縁体化した強磁性体について,基底状態の軌道状態やスピン状態,および磁気励起を研究する目的で,パイロクロア構造をもつバナジウム酸化物Lu_2V_2O_7を取り上げた。強磁性基底状態の軌道状態を調べるため,強磁性状態のNMRスペクトル測定を開始し,広い周波数帯に広がるLuとV原子核のNMR信号を観測した。現在,軌道状態の情報を得るための測定手法や解析手法の検討を行っている。 f電子系化合物における反強磁性秩序 金属状態における磁気秩序について金属絶縁体転移との関連を研究する目的で,アクチナイド化合物の金属反強磁性体UNiGa_5を取り上げた。反強磁性状態および常磁性状態のGa NMRスペクトルのデータ解析を行った。結晶構造の対称性を詳細に検討した結果,信号のサイトアサインメント,および各サイトの電場勾配テンソル,内部磁場の大きさと方向を一意に決定することができた。 さらに,空間群の表現論を用いた磁気構造解析と,磁気空間群を用いたNMRスペクトル解析を組み合わせた解析手法を考案し,UNiGa_5の磁気構造を決定した(Phys.Rev.B誌に発表)。
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