研究概要 |
本研究の目的は,1.極低温域熱電能S・熱伝導κの測定を中心とした,1K以下にいたる極低温域の諸物性測定を行うシステムの構築・改良を行うこと,2.極低温城で異常な熱電特性をもつ物質の探索とその物性を調べることであった.当該研究期間を終えて,測定システムの構築・改良を行い,測定ができるようになったものは,(1)0.1Kから室温までの熱電能・熱伝導測定システム,(2)0.7K〜30Kまでの高圧力下比熱測定システム,(3)0.1Kから200Kまでの精密比熱測定システム,(4)0.05Kから室温までの精密電気抵抗測定システムである.これらのシステムと既存の測定システムを用いて,希土類系f電子化合物の物性測定を行い,以下の成果を得た. 1.重い電子系Ce(Ni,Pd)_2Si_2の非フェルミ流体的ふるまいが現れる0.15K〜10Kの温度範囲において,電子比熱係数γと,熱電能と温度Tの比S/Tとの間の密接な相関を見出した. 2.価数転移物質(Yb_<0.8>Y_<0.2>)InCu_4の圧力下磁化測定で見出された2Kの圧力誘起強磁性転移を比熱測定によって,バルクの性質であることを実証した. 3.価数揺動物質系EuPd_2Si_2の等体積希釈系に対する精密比熱測定,電気抵抗測定等により,その価数揺動メカニズムを単サイト・インターサイト起源に分離した.また,この希釈系での低温領域において電気抵抗と比熱に近藤効果様のふるまいを見出した. 現在,PrFe_4P_<12>をはじめとしたPr化合物に注目しながら極低温域の熱電能を測定,研究を行っている.一方,熱伝導測定に関しては,熱電能測定と同時にデータそのものは得られてはいるものの,断熱状態に若干の不安要素があり,定量的な議論が十分行える段階にないが,問題を解決して早期の成果発表を目指したい.
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