研究概要 |
典型的な高濃度近藤物質でもあるCeB_6が奇妙な相転移を示すとして注目されており,四重極,八重極相互作用,多重極子のゆらぎの存在など最近その本質が明らかになってきた。しかし,多重極相互作用についてはわからないことが多い。特にLa添加により出現する謎に満ちたIV相を中心に多くのグループで盛んに研究されている。本研究ではCe_xR_<1-x>B_6(R=La, Pr, Nd)単結晶についての詳細な研究を行い,以下のことを明らかにした。(1)参照系であるPrB_6における四重極相互作用と磁気相図との関係を明らかにした。(2)La添加により出現するIV相出現した直後の単結晶Ce_<0.8>La_<0.2>B_6作成に成功し,IV相出現状況を明らかにした。(3)Nd置換とPr置換とで秩序状態への影響の及ぼし方が全く異なる。CeとPrは強く結合するが,CeとNdとの結合は非常に弱いことが熱・輸送特性の測定から明らかになった。これに伴い,秩序状態での近藤効果もPr, Nd置換で大きく異なり,Pr置換系では速やかに壊れるのに対し,Nd置換系では近藤状態は反強磁性秩序状態にあってもほとんど影響を受けない。(4)Ce_<0.7>Pr_<0.3>B_6で出現するVI相で中性子散乱とX線散乱とが異なる波数ベクトルで秩序化することを発見した。これは希土類元素では本来非常に強いはずのスピンと軌道の分離を意味する可能性がある。(5)La添加系IV相への磁性イオン添加で奇妙な相が出現することを発見した。(6)Ce_xR_<1-x>B_6の熱起電力の系統的研究から,近藤効果とRKKY相互作用の競合について新たな知見を得た。
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