研究概要 |
層状ホウ化物MgB_2(超伝導転移温度T_c=39K)の高温超伝導が従来の超伝導理論で説明できるのか,それとも新しい機構によるものかを判断するために,トンネル分光法を用いて調べ数々の新事実を明らかにした. 多結晶低温裂開接合トンネル分光から超伝導エネルギーギャップ2Δ=10meVであり2Δ/k_BT_c=5-6の異常な強結合性を示す事を明らかにした.多重ギャップ構造を観測し「相関2ギャップモデル」で記述できることを明らかにした.ギャップの磁場効果の測定から最大,最小ギャップの外挿消失磁場18-22T,7-11Tがab面内,c軸方向の上部臨界磁場と各々等しいことを見出し,多重ギャップの磁場応答を明らかにした.多重ギャップの起源としてB2p軌道σ,πバンド構造に起因した2バンド超伝導機構が挙げられるが,組成不均一性の存在によるその可能性を指摘した. この超伝導機構を深く探るためにポイントコンタクト法で電子対媒介相互作用スペクトルの測定を行い,Bハニカム層の高エネルギー面内フォノンモード(〜75meV)が電子と強く結合していることが明らかになった.これよりMgB_2の異常な強結合性は従来の強結合理論では説明できないことを示した.なぜなら,この理論では強結合は低エネルギーにより実現されるからである.同じ結晶構造をもつNbB_2とCaAlSiについても測定した.NbB_2では2Δ=2.6meV(T_c=7K),2Δ/k_BT_c=4.3の強結合超伝導体であることを明らかにした.また,MgB_2と同様にB軌道の伝導帯への関与を指摘した.CaAlSiについても2Δ=2.5meV(T_c=6.4K)、2Δ/k_BT_c=4.5が得られ,強結合超伝導体であることを明らかにした.これらの研究から,AlB_2型超伝導体の強結合性を明らかにした.
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