研究概要 |
超ウラン化合物の電子構造の研究、特にフェルミ面に関する新しい結果を得た。 1.反強磁性体NpRhGa_5のフェルミ面と磁気モーメントを軌道分極効果を考慮した相対論的スピン分極バンド理論を用いて計算した。この物質はHoGoGa_5型の結晶構造をもち、基底状態の磁気モーメントは[110]方向にあり、q=[0,0,1/2]で秩序化している。計算から得られたフェルミ面の形状は、ド・ハース-ファン・アルフェン(dHvA)効果により測定させた振動数ブランチの角度依存性をよく説明することがわかった。また、Npサイトの磁気モーメントの大きさは中性子散乱による磁気モーメントの測定値と一致している。これらの計算結果から、NpRhGa_5の5f電子は遍歴磁性電子として振舞うことが明らかになった。 2.相対論的バンド理論によるNpRhGa_5のフェルミ面と磁気モーメントの成功は今後のNp化合物の研究の方向性を示したが、スピンと軌道の自由度が制限された非磁性Np化合物に対しても同様な性質が保たれているのかを調べる必要がある。ほとんどのNp化合物は磁性体であるが、NpGe_3は少ない非磁性化合物の一つである。相対論的ハンド理論により、NpGe_3のフェルミ面の計算を行った。この計算結果は観測されたdHvA振動数ブランチの定量的な一致を与える。さらに、電子比熱係数で見積もられる増強因子を考慮すると、サイクロトロン有効質量は理論値と実験値との定量的な比較が可能である。 3.非磁性のPu化合物PuIn_3のdHvA振動数の測定が国内で初めて成功した。この測定されたdHvA振動数ブランチの起源を相対論的バンド理論による計算で定量的に示すことができた。この成功は非磁性のPu化合物でも、5f電子が遍歴電子として振舞うことを明らかにしたものである。
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