研究課題/領域番号 |
15540357
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
数理物理・物性基礎
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
白倉 孝行 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (90187534)
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研究分担者 |
松原 史卓 東北大学, 工学部, 教授 (90124627)
進藤 浩一 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (10004384)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2004年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2003年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | スピングラス / モンテカルロシミュレーション / ランダムスピン系 / ハイゼンベルグモデル / フラストレーション / レプリカ対称性の破れ |
研究概要 |
本研究は強いランダム異方性がある場合のハイゼンベルクSGのBinder比を調べたことが、きっかけとなっている(論文1)。従来、等方的なハイゼンベルグSGで異なったサイズのBinder比に交差がみられないことが、有限温度でのSG相の不在の証拠とされ、実験で観測されるSG相はランダム異方性のために生じるとされてきた。我々は、ランダム異方性のあるハイゼンベルグSGのBinder比は、転移温度近傍で交差ではなく、負のくぼみを示すことを見いだした。後に、この原因はランダム異方性がある場合でも、オーダーパラメーターとして等方的な場合と同じスピンオーバーラップのテンソル成分の2乗和を用いているせいであることがわかった。ランダム異方性がある場合により自然なスピンオーバーラップの対角成分の2乗和をオーダーパラメーターとして採用した場合には、それから定義されるBinder比は通常の相転移でみられる交差が観測されることがわかった(論文2)。問題は等方的な場合である。等方的な場合は、有限サイズの系では系全体のスピンの一様回転が生じてしまうために、対角成分の2乗和をオーダーパラメーターとしてもうまくいかない。そこで我々は、2つのレプリカ系の1つに、スピン系全体に一様回転を加えて、スピンオーバーラップの最大値を求め、それをオーダーパラメーターとした。カイラリティ自由度があるので、1つのレプリカ系のスピン系全体を反転した系に対しても同様のことを行い、大きい方と小さい方に分けてオーバーラップ分布関数を求め、それから種々のスピングラス物理量を求めた。その結果、大きい方のオーバーラップ分布関数は、低温で2ピーク構造が現れることがわかった。これは、川村らによってカイラリティ・オーバーラップ分布関数でみられた奇妙なふるまいとの関係を強く示唆するものであり、1ステップ・レプリカ対称性の破れを伴った相転移の可能性を示唆する(論文5)。 同モデルの基底状態近傍の性質を調べるのも興味深い(論文3,4,6)。SG相の性質としては従来2つの描像が提案されてきた。(A)レプリカ対称性破れ描像:SG相ではエネルギーが基底エネルギーにほぼ等しい多くの状態が存在しそれらは無限に高いエネルギー障壁で隔てられている(パリジ状態)。(B)液滴描像:SG相の基底状態は唯一つであり、励起状態のエネルギーはその励起クラスターのサイズの増大と共に増加する。我々は、遺伝的アルゴリズムなどの方法により、基底状態とその近傍の準安定状態を調べ、パリジ状態が存在することを見いだした。更に、パリジ状態近傍の励起状態を調べ、これらの励起状態の性質が強磁性体のそれに非常に類似していることも得られた。これらはスピングラスの低温相の解明につながる重要な知見である。
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