研究概要 |
量子群の結晶基底に付随する1次元可積分セルオートマトンとそれに関連する諸問題について,大きな進展を達成できた. 3年間で得られた成果(1)-(6)の概要を以下に述べる. (1)D型のトロピカルRについて,双線形形式を見出し,DKP階層のタウ関数がその解となることを証明した.系統的な退化により,C型やねじれA型のアフィンリー環についても同様の結果を得た. (2)箱の容量の大きいセルオートマトンについて,時間発展を対生成・消滅する粒子・反粒子系の運動として明示的なアルゴリズムで記述することに成功した. (3)パラメーターqが0のとき箱玉系になるような量子的力学系を頂点模型の極限操作から構成した.量子的時間発展を粒子の種類ごとの運作用素に因子化し,2種類のノルムを導入してその性質を調べた. D型の場合についても同様の結果を得た. (4)反射壁のある箱玉系を構成した.ソリトンの自由度を抽出し,散乱規則,反射規則を明らかにした.境界可積分条件の解を見出し,トロピカル化した設定で反射方程式を証明した. (5)フェルミ公式の証明の核となるKKR全単射について,結晶基底の組み合わせRだけを用いた記述を得た. 非例外型の全てのKKMクリスタルについても同様の予想を得た.これは箱玉系の逆散乱形式に相当する. (6)周期箱玉系をKKMクリスタルやA型のKRクリスタル一般に拡張し,状態数と一般周期公式の予想を得た. A型で最も簡単な場合にはq=0とq=1のベーテ仮説を組み合わせることにより,初期値問題を逆散乱法により完全に解くことに成功した.
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