研究概要 |
本研究は、厳密な解析的計算に出来るだけ依拠して、二次元ランダム系のスケーリング理論(仮説)の「一電子波動関数はランダム性がいかに弱くとも指数関数的に局在する」との主張の可否を明らかにしようとするものである。二次元帯状の自由空間にランダムにデルタ関数型ポテンシヤルをおいた特殊なモデル(Azbelモデル)については既に指数関数的局在の消失を示唆する結論が得られていたが、その結論は波動関数の絶対値の二乗の減衰解の最大リャプノフ指数に関するある不等式の存在を前提としていた。 本研究では、1これらの議論を標準的な二次元強結合ランダム系で再構築し、また2存在を前提としている不等式の数値的な検証を行なうこと、を目的としている。 1については、ほぼ計算が出来、Azbelモデルについてのそれよりもはるかにあいまいさの無い結果を得た。例えば、この系は自由度が最初から有限なので、自由度のカットオフは不要であり、また電子状態の取るエネルギーは単一バンドを構成しているので、バンド間遷移は最初から考える必要が無い。 2については数値計算により、(a)有限系のリャプノフ指数のサンプル揺らぎ(分散)が二次元帯の幅Sに依存せずその長さLの増大とともに中心極限定理に従ってL^<-1>で収束する数値的結果、(b)波動関数の絶対値の二乗の増大解の最小リャプノフ指数に関する不等式の存在を肯定する数値的結果、(c)最小リャプノフ指数の大きさはS^<-1>に比例して減少する数値結果、等を得た。 1,2の結果を合わせて(A)2003年秋(岡山大)及び2005年春(東京理科大)の日本物理学会と、 (B)10-th Int.Conf.Hopping and related phenomena(Trieste,2003)で発表するとともに、 (C)Physica Status Solidiに論文を公表した。1,2の全体の詳細をまとめたものを研究成果報告書にまとめ、また近く論文として公表する予定である。
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