研究概要 |
N-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAM)にルテニウムビピリジン錯体(Ru(bpy)_3^<2+>)を共重合し、BZ反応液中で周期的にコイル-グロビュール転移を繰り返すRu(bpy)_3^<2+>-co-PNIPA分子を創製した。この分子を基本として、1分子からミクロ集合体への階層構造の構築を目指した。BZ溶液中でレーザートラッピングによるRu(bpy)_3^<2+>-co-PNIPAM高分子微小集合体の形成を試みたところ、約5μm程度の集合体の自励的な体積振動が観測された。更に、自律機能を内包する要素系の構築を目指して界面活性剤(AOT),BZ反応溶液,油(オクタン)からなるwater-in-oil型のマイクロエマルジョンを作製した。温度,液滴のイオン強度,液滴の組成比、液滴の体積分率、等を通じて液滴の大きさや形態を制御し、活性因子(亜臭素酸)と抑制因子(臭素イオン)の拡散速度に差を与えた。その結果、隣り合うクラスター内の波が互いに反位相になる波(クラスター波)、周期が急激に変化する波、対消滅しない波、等、多様なパターンが観測された。 BZ反応を基本にした自律型微小ゲルを要素とする興奮性結合系を構築し、自律型微小ゲルを要素とした多元要素系の確率共鳴を通して自己組織化に与える階層化の効果を調べた。要素の1次元配列では、(1)要素数の増加と共にノイズ誘起振動のコヒーレンス度が促進される、(2)直接的な相互作用のない要素間の位相同期は、それらの間に挟まれた要素の不規則振動を媒介にして達せられる、(3)位相同期現象の生起には、コヒーレンス共鳴が介在する、等、興味ある結果を得た。更に、数値シミュレーションに向けて実験系のモデル化を行い、外場効果を考慮できるように修正したオレゴネータモデルを用いて観測結果を再現した。
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