研究概要 |
低温・高密度He(気体・液体・固体)中に中性原子(Mg,Ca),イオン(Ba^+)を生成し,そのスペクトルを測定することにより,不純物原子・イオンとその周りのHeとの相互作用を調べた. 1.低温He(気体・液体・固体)中のアルカリ土類原子の分光 液体He中の不純物原子はパウリの排他律に基づく斥力により周りのHe原子を遠ざけることにより真空の空洞を形成することが知られているが,Mgではそのスペクトルの幅やピークのシフトがバブルの形成だけでは説明出来ていなかった.本研究では,液固体He中のMg,Caについて,^1S_0-^1P_1遷移の吸収発光スペクトルのHe圧力依存性を調べ,Mgの発光スペクトルは,圧力と伴にピークが長波長側ヘシフトし,他のアルカリ土類原子(Ca,Ba)とは逆の圧力依存性であることが分かった.Mgの励起状態に深い引力ポテンシャルがある場合には,モデル計算によりこの圧力依存性が説明できる.このことは,スペクトルの幅やシフトの大きさを説明するために導入されたエキサイプレックス形成仮説とは整合性がある.さらに詳しく調べるために,低温Heガス中でのMg原子の発光スペクトルを調べた結果,He温度の低下と伴に,線幅の拡大,長波長側の明確な構造の出現があり,温度の低下と伴にこの構造は明確となった.これは,エキサイプレックスを形成するHe原子の個数の変化として説明され,Mg^*-He_n型のエキサイプレックスの形成が検証された.分子構造を明らかにするためにはさらに理論解析を進める必要がある. 2.Ba^<+*>-Heエキサイプレックスの形成・解離ダイナミックスBa^+-Heの2体断熱ポテンシャルを理論的に計算し,Ba^<+*>-Heエキサイプレックス(6p^2II_<3/2>)からの発光スペクトルを予想した。低温ヘリウムガス中でレーザーアブレーション・レーザー共鳴により用意したBa^<+*>(6p^2II_<3/2>)とHeとの衝突によりBa^<+*>-Heを生成し,振動バンドを伴う発光スペクトルを得た,レート方程式を用いたモデル解析により,Ba^<+*>とHeとの衝突によるエキサイプレックスの形成,振動緩和,解離などのレートを求めた.
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