研究概要 |
液晶-高分子混合系の相転移挙動は、非常に注目されているもののその動的挙動についてはほとんど研究が及んでいないのが現状である。液晶-非液晶混合系の一方に液晶分子と非常にサイズの異なる高分子をもちいた場合、液晶性分子の配向緩和挙動や並進配向結合挙動にどのような影響があるかは非常に興味深い。本研究では、液晶性分子と高分子混合系の等方相での相転移近傍において、ヘテロダイン高分解能光散乱法で光散乱スペクトルを測定し、配向緩和時間や並進配向結合定数を求め、動的挙動に対する知見を得ることで、複雑な相挙動への理解を深めることを目的として行っている。 液晶としては,4-cyano-4'-pentyl biphenyl(5CB)を,高分子としてはポリスチレン(PS)をもちい,この混合系に対し配向緩和時間と並進配向結合係数を測定した。分子量の大きいPSを添加した場合、配向緩和時間と並進配向結合定数の5CBとの変化はあまり観察されなかったが、低分子量のPSを添加した系に対しては、相転移点は大きく低下した。液晶に対する高分子は分子量が大きくなるにつれて相溶性が悪くなることが知られている。本研究より、5CB-PSの相互作用よりも、液晶分子同士の相互作用がはるかに強く、5CB-PS混合状態から、PS分子がはじき出されるため、PSによる液晶分子の配向運動に与える影響は小さいと考えられる。しかし、分子量が液晶に比較的近いPSでは、相転移点近傍においてRが低下していることから、PS鎖の存在が液晶分子同士の並進運動と配向運動の結合を阻害すると推察した。 以上のことを考察するために,PS-5CB系でPSの固有粘度の温度依存性を測定した。分子量の大きいPSでは,固有粘度は温度の上昇につれて増大し,小さいPSでは固有粘度は温度の増大につれ減少した。高分子量のPSは高温で相溶性が増し,低分子量のものは逆になることがわかった。
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