研究概要 |
1998/99年に生じた北太平洋全体におよぶ気候変化,およびその背景となる大気海洋の変動について研究を行った.ここでは特に主要な成果について報告する. データー解析から20年変動と50-70年変動とが周期比3対1で同期して,北太平洋の気候レジーム・シフトを引き起こしていることを代表者は提案していた.この理論的な背景を探るために,簡単な遅延振動子モデルに周期的な外力あるいは周期的な変調を加えて,同期が生じる理由と条件とを,従来よりもはるかに見通しよく説明した. 1998/99年頃に太平洋周辺の海氷変動にも,大きな変化が生じていたことを見出した.ベーリング海の海氷では,春の海氷が1999年頃から東部ベーリング海で顕著に減少し,この変化はアラスカにおける低気圧偏差によることが明らかになった.また,オホーツク海の海氷は長期的に減少傾向が続いていたが,1990年代後半および2000年代前半には一転して海氷が多い状態となった.この長期変動には,秋季の大気の状態が重要であることを明らかにした. 海洋表面水温変動の振幅が大きいフロント域において,1998/99年の変化がどういった特徴を持っているのかを,独自の高解像度SST格子データ(インターネットで公開済み)を作成し評価した.北太平洋の亜熱帯フロントでは,顕著な水温上昇が見られるものの,亜寒帯フロントでは特段の変化が見られなかった.このことは,1970年代のシフトでは亜寒帯フロントの方が明瞭な変化を示したことと対照的な結果である. また,レジーム・シフトを特徴づけるアリューシャン低気圧の変動は,その冬季の強度から線形トレンドを除くと,bimodalな分布を示し,非線形フィードバックがレジーム・シフトの背景として重要であることを示唆した.
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