研究概要 |
木星オーロラの起源にせまるため,オーロラの明るさが太陽風動圧の増減に対して「正,負,いずれの相関を示すか」を観測的に実証することを主眼に,研究を実施した。これまでのところ,観測的には(弱いながらも)正の相関が,理論モデルでは負の相関が予想されている。この両者の矛盾を解き明かし,オーロラの起源に迫ることを目指したのである。 我々は,電波シンチレーションを観測し,そのトモグラフィ解析から太陽風の立体構造を求めた。さらにMHDシミュレーションと組み合わせ,木星軌道における太陽風パラメータおよび惑星間空間磁場(IMF)を決定している。これと,地上からの赤外線観測で得られた木星オーロラの積分輝度値とを比較・検討した。データを検討したところ,1998〜2000年の木星観測データがこの比較に適しており,その中から4つのセット(密度・観測精度ともに高い)を選び出した。太陽風パラメータとの比較の結果, (1)特にデータ数の充実した2つのセットにおいて,木星オーロラの明るさと太陽風動圧との間に,正の相関が認められた。 (2)1つのセットは負の相関を示唆するが,木星観測が2晩だけであり,直前のIPS観測も欠けており,断定的なことはいえない。もう1つのセットでは太陽風動圧の急激な増大に関わらず,木星オーロラは安定した明るさとして観測されていた。 (3)全セットを通じて,IMFが北向きのときに明るいオーロラが,反対にIMFが南向きのときに暗いオーロラが観測された。地球の場合は,南向きIMFのとき,磁気リコネクションによりオーロラ・サブストームが発生しやすい。本研究の結果はそれとは逆であるが,木星のもつ惑星磁場が地球とは南北反対の極性をもっていることと矛盾しない。 特にこのIMF極性との相関は本研究で初めて(観測的に)示唆されたものであり,重要な知見である。今後も,本研究で得た優れたツールと知見に基づき,木星オーロラのメカニズムの解明を進めてゆく。
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