研究概要 |
東南極エンダビーランド,リーセルラルセン山地域に分布する原生代塩基性貫入岩類の試料に対して古地磁気学的研究を行い,以下の結果を得た。 古地磁気測定の結果,57地点中,21地点から安定な高消磁段階成分の方位を得た。NE系岩脈(約19億年前)では,偏角SW,伏角正の成分と偏角SW,伏角負の成分が特徴的である。N-S系岩脈(約12億年前)では,伏角正で,偏角N〜Wの成分が得られた。 帯磁率異方性測定と薄片観察の結果,変形が顕著に認められるものがあり,そのような試料には,異方性度が1.3を超えるものが多数認められた。 熱磁気分析の結果,主たる強磁性鉱物は,マグネタイトであることがわかった。また,15地点の試料ではピロタイトが認められた。交番磁力計による磁気パラメータ測定の結果マグネタイトが主に帯磁率異方性を担っていて,磁性鉱物粒子のサイズは疑似単磁区から多磁区サイズと推定された。 磁気的異方性の度合い/方向性と高消磁段階成分の方位との比較から,平均異方性度1.3以上の地点,平均異方性度1.2以上でmagnetic foliationと残留磁化方位の関連性が認められる地点からの高消磁段階成分方位は変形の影響を受けている可能性があると判断した。最終的,15地点からの高消磁段階成分が初生的磁化成分の可能性があるとした。その結果,N-S系岩脈の平均磁化方位は,偏角-44.4°,伏角66.0°(α_<95>=48.5°),NE系岩脈からは,偏角-119.5,伏角-36.4°(α_<95>=34.8°),偏角-119.8°,伏角39.1°(α_<95>=17.0°)の2つの平均磁化方位を得た。 これらの平均磁化方位に対応する古地磁気極は,オーストラリアから得られている約12億年前,19億年前の古地磁気極とは,東南極-オーストラリアのゴンドワナ大陸配置では一致しない。その当時,東南極大陸とオーストラリアはゴンドワナ大陸の配置とは異なっていた可能性を示唆する。
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