研究概要 |
本研究対象の南極海周辺域堆積物コアは,旧石油公団により採取されたもので,現在産業総合研究所の地質標本館に移管されている.研究担当者および分担者は,南極海周辺域の古環境変遷の解析のため,これらのコアのうち22本から,約4200個の定方位サンプルを採取した.試験的に交流消磁テストをおこなった結果,試料である堆積物の自然残留磁化は安定であり,古地磁気用試料として解析しうることが判明した。また,帯磁率・非履歴性残留磁化・飽和常温残留磁化・帯磁率異方性などの測定もおこない,これらの岩石磁気物性からも,古環境変動解析に有益なデータが得られた.これらの測定は,大東文化大学・東洋大学,京都大学,高知大学の海洋コア総合研究センターにておこなった.さらに,本研究をおこなうために,パルス型磁力計を大東文化大学に導入し,飽和常温残留磁化などは大東文化大学で測定した.また,大東文化大学および高知大学の海洋コア総合研究センターにて,堆積物の粒度分析をおこなった. それらのデータの解析結果,堆積物中の磁性鉱物は,ほとんどがマグネタイトおよびマグヘマイトであった.また,これらの堆物の起源は粒度分析よりほぼ南極大陸と推定され,マグヘマイト化は南極周辺海域で進んだ可能性が高く,この海域は基本的に酸化環境であると結論された. コアのうち,ウイルクスランド沖,およびデュモンデュルビル海のコアについては,古地磁気層序学に,数種類の岩石磁気特性を併用し,コア相互の対比が可能であることが明らかになった.さらにデュモンデュルビル海の3本のコアについては,過去70万年間に明確な数回の磁気特性(0.1TのS率,Hrc/Hc,Mr/Ms,SIRM/k)の変動が見られた.磁気特性の変動は,南極大陸を起源とする堆積物の変化,すなわち氷床が運搬する堆積物の変化を表すので,これらの変動は氷床変動を表していると結論した.
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