研究概要 |
化石研究の分類において,タイプ標本が参照できないことは大きな障壁となる。本研究の目的はこの障壁を取り除くために,特に古典的なコレクションに関する現時点でのタイプ標本の所在確認を行い,それらの最新の分類学的位置づけを再整理することであった。東北大学学術総合博物館で合計3回,北海道大学では4回,筑波大学については2回の訪問調査を実施した。調査内容は,Sugiyama and Ezaki(2002)で作成したタイプ標本カタログリストに,該当する標本(主に薄片)を特定することである。特定できた標本は,薄片ラベルへの記載事項を記録した。その際,文献に記載された登録番号と薄片番号の照合・整理に,細心の注意を払った。また,論文中で図示された標本については,現状を記録するためデジタル顕微鏡写真,またはスキャナによる透過光スキャン画像を撮影,収集した。得られた画像ファイルの総数はおよそ1200に達する。撮影ないしスキャンした情報は表形式のデーターとして,調査した研究機関ごとに整理した。これらの情報をSugiyama and Ezaki(2002)のカタログに貼り込み,保存先や図示されたときの文献情報,番号の記載ミスなどの混乱の修正情報などを付記し,現時点での画像つきタイプカタログを作成した。 東北大学ではYabe and Hayasaka(1915,1916,1920)が記載した22属34種うち,1種を除き全てのタイプに相当する標本を特定,確認した。北海道大学では,Ozawa(1925),Sugiyama(1940),Yokoyama(1960)など,本来他の大学に登録されていた標本を多数確認した。今後の課題として,未登録標本や移動している標本の整理,未調査機関の継続調査,全報告種,未定種を含む化石サンゴ全体を網羅するデータベースの構築などがあげられる。
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