研究概要 |
超低速拡大軸である南西インド洋海嶺のアトランティスII断裂帯東斜面・アトランティスバンク地域に露出する海洋地殻・マントル構成岩石の岩石学的・地球化学的検討(記載岩石学,岩石と鉱物の主要元素・微量元素・SrとNd同位体比の検討)を行った.斑れい岩類についてはアトランティスバンク中央部のODP掘削孔735Bで採取されたものと全く差異が認められないこと,かんらん岩類については,この周辺地域からドレッジなどによってこれまで報告されているものと同様に部分溶融度の低い性質を有する典型的な溶け残りマントルかんらん岩であることを確認した.南西インド洋海嶺のアトランティスII断裂帯・アトランティスバンク地域の斑れい岩類を低速拡大軸である大西洋中央海嶺,高速拡大軸である東太平洋海膨の斑れい岩類と比較した.その結果,拡大速度の増大に応じて斑れい岩中の斜長石や単斜輝石のNa/Ca比・Na量の減少傾向が認められ,これは拡大速度の増大がマントルの部分溶融度の増大を伴うことを斑れい岩類の性質から示すものである.その他にも様々な検討を行った.現在までにこの地域で採取された斑れい岩類に含まれるかんらん石のMg#は85程度であり,マントルの溶け残りかんらん岩中のもの(Mg#90-91以上)とは相当な隔たりがある.つまり,そのようなかんらん石を含む未分化集積岩が欠如しているということになる.今回の研究によって,そのような未分化マグマが存在したことを示す高Mg#かんらん石を含むトロクトライト質包有物をドレライト中に発見した.マントル由来未分化マグマの存在はアセノスフェリックマントルのダイアピリックな上昇がその地点で起こったことを明瞭に示すものであり,マグマの活動が大変不活発であるとみなされる超低速拡大軸の断裂帯の近傍においてもアセノスフェリックマントルの上昇があったことが明瞭に示されたことになる.
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