研究概要 |
この研究によって確認された知床半島における金銀銅鉛亜鉛鉱化作用は中期中新世の海底火山-熱水系によって形成されたと考えられる根室黒鉱鉱床にのみ見られる. 根室黒鉱鉱床の産状上の特徴は母岩が中部中新統西黒沢階上部に相当する忠類層酸性火砕岩であること,最も密接な鉱化変質がイライトークロライト組合せであること,鉱体の形態が塊状や層状を呈して比較的明瞭な方向性を持つ傾向があること,石膏鉱体は別として黒鉱および黄鉱が別々の鉱体として産しないことなどである.組織は離溶や同時晶出を示す組織と交代組織が見られ,後者が前者より卓越している.鉱石の化学組成上の特徴はCu-Pb-Zn三成分比およびAg/Auともに模式的黒鉱鉱石とほぼ等しい値を示すこと,その微量元素はCdおよびSbが黒鉱中に,Coが黄鉱中に比較的多く,また,MnおよびNiがそれらの両方にほぼ等しく含まれる傾向があることなどである.鉱石の鉱物組成については主成分鉱物を明らかにするとともに,特に微量鉱物の金銀鉱物,斑銅鉱,銅藍,白鉄鉱などが比較的多いことを見出した.鉱物の共生関係や性質については鉱物の晶出順序がかなり明瞭であること,エレクトラムの粒度,共生関係などを明らかにした.
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