研究概要 |
本研究課題では,これまで全宇宙における元素の存在比が多いにもかかわらず,不明な点が多かった硫黄単体の高温高圧挙動をDIA型と呼ばれるマルチアンビル型高圧装置と放射光を用いたX線その場観察法で調べた。なお,焼結ダイヤモンドを素材としたアンビルを利用する高温高圧発生技術の改良することで,17GPa,900℃程度までの条件を問題なく発生し,その条件でのその場観察が可能となった。この圧力温度範囲の研究で以下のことが明らかになった。 1.この圧力温度範囲で,常圧相と液相以外に3種類の高圧相がある事が明らかになった。これら3種類の高圧相は,大気圧条件下には凍結されず,従来の凍結法による研究手法では,これらの高圧相の発見が不可能であったことが明かとなった. 2.これらの3種類の高圧相は,得られた粉末X線回折パターンの解析から,高圧相1は3回の螺旋構造を有する六方晶の結晶構造を,高圧相2は6員環状分子構造を有する六方晶の結晶構造を,そして高圧相3は4回の螺旋構造を有する結晶構造を有していることが明らかになった. 3.これら3種類の高圧相と常圧相の室温における圧縮挙動を調べたところ,高圧相2の場合,六方晶のc軸が異方的に圧縮されることが明らかになった。これは,高圧相2が6員環状分子からなっており,それがc軸方向に積層しており,分子間の圧縮率が大きいためと考えられる。 4.これら3種類の高圧相と常圧相および液相の安定域を確定した。
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