研究概要 |
1.単斜輝石斑晶を用いたメルトの微量元素組成の推定 オマーンオフィオライトの火山岩類は,ほとんどが熱水変質を受けており,形成当時の組成を保持していない。そこで,残存している未変質の単斜輝石斑晶を分析し,マグマの初生的な微量元素組成を推定した。その結果,オマーンオフィオライトの火山岩類は,微量元素組成の特徴から6つのタイプ(タイプA〜F)に大別できることが明らかとなった。 2.メタモルフィックソールを用いたフルイド組成の推定 沈みこんだ海洋リソスフェアの最上部が現在,角閃岩相の変成岩(メタモルフィックソール)としてオマーンオフィオライトの下に付着している。このメタモルフィックソールについて化学分析を行い,角閃岩相のスラブから放出されたフルイドの微量元素組成を推定した。 3.希土類元素分析法,同位体比分析法の開発 イオンクロマトグラフを用いた希土類元素測定法を開発した。また,表面電離型質量分析計を用いたSr,Nd同位体比の測定法,マルチコレクターICP質量分析計を用いた,Pb同位体比測定法を確立した。 4.データ解析とまとめ オマーンオフィオライトにおいては,拡大軸でのマグマ活動(タイプA)の収束後,海洋リソスフェアの沈み込み開始に伴い,タイプB,Cのマグマ(双方ともソレアイト系列)が,タイプD,E,Fのマグマ(ソレアイト系列およびボニナイト系列)に先行して活動している。タイプBおよびタイプD,Eのマグマの組成は,メタモルフィックソールから推定されたフルイドをマントルに加えて部分融解させたときに生じるマグマの微量元素組成の計算値とよく一致する。このことから,これらのマグマは,沈み込み最初期において,角閃岩相のスラブから放出された流体によって汚染されたマントルウエッジが部分融解して生じたというモデルを構築した。
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