研究概要 |
非接触プラズマの発見を機に,プラズマ周辺部の原子・分子の反応・流れ・光放射の理解が核融合実現のために非常に重要であるとの認識が高まっている.我々は,非接触プラズマにおいて重要とされる分子活性再結合を含む各種の反応を考慮した水素原子・分子衝突輻射モデル・中性粒子輸送コードからなる計算機コードを開発した.さらに,これを我々の高周波プラズマ,LHDプラズマに適用した. 分子活性再結合の実効的速度係数は水素分子の初期振動状態に強く依存する.我々はまず,振動状態を考慮した水素分子衝突輻射モデルを整備した.また,非接触プラズマでは,プラズマの再結合による基底状態原子の増加のため,輻射輸送が重要となる.我々は,収束計算によりプラズマ中の輻射場と励起原子密度の空間分布を同時に求める手法を開発した.これらを中性粒子輸送コードに組み込んだ.分子活性再結合の反応速度係数は水素分子の回転状態にも大きく依存する.回転温度を上記の計算機コードに与えるため,我々はさらに,分光計測で得られる真空紫外発光線Lyman帯およびWerner帯のスペクトルから振動・回転温度を算出するためのコロナモデルを構築した. 計算機コードを信州大高周波水素放電プラズマに適用し,主量子数n=3,4,5の水素原子密度を計算したところ,バルマー系列発光線強度から得られた値とほぼ一致した.主な生成過程はライマン線の吸収,H+e->H^*+e, H_2+e->H+H^*+eであり,それらは概ね同程度となった. LHDプラズマにも計算機コードを適用し,京都大学の岩前らの分光計測で得られたH_α発光線プロファイルを解析した.励起水素原子の生成過程別の発光線プロファイルを計算し,さらにドップラー効果,ゼーマン効果を考慮した.速度分布の計算では,中性粒子同士の弾性衝突を組み込んだ.H_α発光線上準位の励起原子の生成過程に,H_2(v)+e->H_2^++2e ; H_2^++e->H+H^++eと,H_2(v)->H+H^*->H+Hの寄与が大きいことや,壁から放出される水素分子の振動状態によって発光線プロファイルに変化が起きるなどの結果が得られた.
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