研究概要 |
本研究を開始した平成15年度から,既存のDASロータシステムで試料回転周波数を上げるための試みを行った.具体的には,ロータの蓋と形状を変化させたものを作り実験してみた.しかしながら回転周波数は最高で約6kHzで,10kHzを超えることができなかった.さらに試料回転軸切替の前後で回転が不安定となった.この結果を受けて,平成15年度後半からはDAS方式とは別の,違ったアプローチも追求することとした. 幾つかの理論的考察を行った結果,普通のマジック角試料回転の下で,多結晶試料のオーバートーンNMRを間接的に測定することにより,本研究の目標を実現できるのではないかという考えに至った.そのアイディアを基に我々は,"^<23>Na核のオーバートーン遷移を誘発するラジオ波を照射してから中心遷移を観測する実験"について理論的に検証した. その結果,"オーバートーン照射を色々なラジオ波周波数で行い,照射した直後に中心遷移の共鳴線を観測して,共鳴線強度を周波数に対してプロット"すれば,^<23>Na核の固体高分解能NMRスペクトルが観測できることが分かった.その研究成果はChemical Physics Lettersに学術論文として掲載され,レフリーから高い評価を受けた. スピン1の^<14>N核にも,通常の遷移が2個とオーバートーン遷移が1個存在する.よって^<23>Na核に用いてその有用性が明らかとなった"オーバートーンNMRの間接測定"は,^<14>N核にもそのまま適用することができる.結果として,オーバートーンNMRの間接測定は,^<14>Nスピンの分解能を飛躍的に向上させることが明らかとなった.現在,^<14>N共鳴周波数と^<14>Nオーバートーン周波数の両方の電磁波を入れて実験できるマジック角試料回転プローブを作成しているところである.
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