研究概要 |
トルエン(T)-トリエチルアミン(TEA)のTHF溶液の発光スペクトルはTの蛍光(バンドA,279nm)、TEAの蛍光(バンドB,336nm)と分子間エキシプレックスからの発光(バンドC,373nm)からなる。T-TEAのTHF溶液にアセトニトリル(AN)と種々のアルコール(MeOH,EtOH,PrOH,BuOH)を加えたときのバンドAとバンドB,Cの強度変化を観測すると,プロトン性溶媒であるアルコールの添加量の増加につれて、バンドAの強度は増大し、バンドBとCの強度は減少することがわかる。非プロトン性溶媒であるANの添加ではバンドB,Cの強度の減少は観測されたが、バンドAの強度の変化はみられなかった。ANの効果は溶媒の極性効果でのみあり,アルコールの効果は極性効果と水素結合効果の両者の効果の重ねあわせである。AN添加の場合バンドAの強度に変化がないことから、アルコールを添加したとき,バンドAは水素結合効果のみを受け、バンドBとCは極性効果と水素結合効果の両方を受けることがわかる。バンドAの強度変化から水素結合効果を見積もることができ、バンドB、Cの変化から極性効果と水素結合効果の重ねあわせが見積れるので、両者を組み合わせることにより極性効果を抽出することができる。このようにして得られた結果によると,THF-アルコール混合溶媒中で水素結合効果/極性効果の比がアルコール量の増加につれて大きくなり、アルコール量が十分多いときに一定値に近づく傾向を示すことを見出した。このほかに,4-phenyl-1-N,N-dimethylaminobutane (PDAB)でも同様の結果を得た。 以上のようにT-TEA系やPDABの多成分スペクトルのミクロ環境変化に因子特異的に応答する各成分の変化を解析することにより,プロトン性溶媒の水素結合効果と極性効果を分離・評価することができた。
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