研究概要 |
1.アシルポリシランの異性化によるシレン生成は、ケイ素化学の上で重要な反応の一つとして知られている。しかし、これまでその反応機構に関する検討は、ほとんど行われていなかった。本研究では、その知見を得る目的で、各種のアシルポリシランからの熱異性化によるシレン生成の速度論的パラメータを求めた。その結果、ΔH^<【thermodynamics】>=25.7-29.3kcal mol^<-1>およびΔS^<【thermodynamics】>=-11.5- -17.5cal mol^<-1> K<-1>という値が得られた。カルボニル炭素上に電子供与性基が置換すると反応が加速され、また置換基によらず負に大きい活性化エントロピーが得らたことから、分子内の協奏的反応機構が示唆された。これらの結果は、分子軌道計算から4中心の協奏的遷移状態を求めることに成功したことで裏付けることが出来た。その他に、アシルポリシランから生成したシレンは、2,3-ジメチルブタジエンと[2+4]環化付加して、シラシクロブテン誘導体を常に主生成物として与えるが、カルボニルがアルキル置換されているアシルポリシランから生成したシレンは、ene-タイプの反応が併発する。一方、アリール基をカルボニル上に有する場合には、ene-タイプの反応を全く起こさず[2+2]環化付加生成物を副生成することを見い出した(論文投稿中)。 2.2,2-ビス(アシル)トリシラン、1,2-ビス(アシル)ジシランの熱および光反応を検討した(論文投稿中)。その結果、異性化によって生成したシレンがさらに反応した生成物を得ることが出来た。その他、シアノポリシランの熱反応によるシリレンの生成、ハロアルキルヒドロシランとアルキルリチウムの反応によるシレン生成を検討した。
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