研究概要 |
メタラリンヘテロ環は、環内に金属-リン共有結合を持ち、かつリン上にローンペアをもつ。このため、リン上にさらに金属フラグメントを結合させることができるので、2種の金属が互い接近したヘテロ2核錯体を構築することができる。このような、2種の金属が互いに接近した構造では、2つの金属による協同的な効果が期待できる。 歪んだ環状配位子であるリン架橋[1]ferrocenophaneおよびnaphtho[1,8-b,c]phospheteをW(CO)_5に配位させ、これらのP-C結合に白金またはパラジウムフラグメントを挿入させた。これにより、期待したメタラリンヘテロ環が生成し、さらにこれが配位子として第2のメタルに配位したヘテロ2核錯体が合成できた。この錯体の2つのメタルにはさまれた空間は、非常に込み合っているため、配位子が脱離しやすくなっていた。 また、2つのリンがヘテロ環に組み込まれた1,2-dihydro-1,2-diphenyl-naphtho[1,8-cd]-1,2-diphosphole(1)を合成し、これを架橋とした2核錯体(OC)_5M(μ-1)M(CO)_5(M=W(2a),Mo(2b),Cr(2c))を合成した。一方、2つの鉄がCp-PPh-Cpで結ばれた[1.1]ferrocenophaneを合成した。この錯体は、エーテル中でリン架橋[1]ferrocenophaneを光照射することで得た。この錯体には、synとantiの2つの構造異性体があり、syn体がanti体よりも熱力学的に安定であることが判った。syn体は、2座のキレート配位子としてはたらき、CoCl_2と四面体型の錯体を形成することをX線構造解析により確かめた。
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