研究概要 |
ポルフィリン上に金属-金属結合をもつ化合物を展開した。 予備段階として金属-炭素多重結合の化合物例としてカルベンルテニウムポルフィリン及びカルベンオスミウムポルフィリンを合成した。得られた化合物について単結晶構造を明らかにした。前者においては第六配位座のルイス塩基の及ぼすトランス影響について考察し、後者においては結合距離からオスミウムの酸化状態を推定した。 上記をもとにアルキルと等電子構造のイリジウム-14族結合をもつ化合物を展開した。THF中の金属カリウム還元によりイリジウムポルフィリンアニオンを発生、シリルクロリド、スタンニルクロリドと反応させる方法で、一連の化合物を合成した。結晶構造解析を行ったところ、Ir-Sn, Ir-Si距離はそれぞれの共有結合半径の和よりもやや短いことがわかった。このことはIr5d軌道電子のSn5d, Si3d軌道への逆供与によるdπ-dπ相互作用に起因すると考えられる。UV-visスペクトルにおけるSoret帯吸収のε_<max>いずれもアルキル化合物に比べて約1.5倍になっていること、Soret帯が双こぶに分裂していることからも,この相互作用の存在が裏付けられた。 さらにヒドリドと等電子構造のロジウム-金結合をもつ化合物を合成した。上記イリジウム化合物同様の方法でロジウムポルフィリンアニオンを発生させ金(I)化合物と反応させた。結晶構造解析、各種分光測定の結果、この化合物はロジウム-金単結合を持っていることがわかった。 以上により金属ポルフィリンアニオンを用いる方法は様々な金属-金属結合の形成に有用であることを実証した。
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