研究概要 |
環境試料として,幹線道路(国道8号線)沿道付近(中央分離帯)及びトンネル(国道8号線の倶利伽藍峠のトンネル,国道157号線の手取ダム近くの桑島隧道等)の車道周辺の土壌及び車道沿いに生育し表面にススを付着しているコケ植物等を採取した。採取試料は,電気乾燥機で80〜110℃で乾燥後,マイクロ波分解装置を用いて湿式分解を行い,フレームレス原子吸光法で定量した。 結果は,国道8号線の地点(金沢市今町付近)では,コケ植物から,微量のPd(29〜59ng/g),Rh(15〜34ng/g)が検出されたが,Ptは<8ng/g(検出限界)であった。一般に車道から1m内にPdとRhが検出された。このことは,貴金属粒子は比較的に重く,自動車の排気管から遠くへ移動せず,道路脇に落ちていることを示している。国道8号線の地点(北陸自動車道西インター付近)では,コケ植物(ギンゴケ)から1,270ng/gのPdが検出され,また土を含むギンゴケから2,950ng/gのPdが検出され,コケの表面を蒸留水で洗うとPdが検出限界以下となることから,Pdはコケの表面に他の固形のダストと共に付着していると思われる。国道8号線の倶利伽藍トンネル(石川県と富山県の県境)の出口と入り口では,自動車道の白線から1m内の土壌とコケ植物のPd, Rh及びPtは検出限界以下であった。この原因としては,自動車道の舗装が定期的に掃除されているためと思われる。国道157号線の地点(手取ダム付近の東二口隧道)では,トンネル内部の歩道の土(出入り口から150m,自動車白線から65〜95cm,車道からの高さ22cm)からは微量(57〜80ng/g)のPd及び歩道の隅にたまった泥から微量(290ng/g)のRhが検出され,トンネル内壁(地上から約1m)のススから微量(1,700ng/g)のRhが検出されたが,Ptは<8ng/g(検出限界)であった。また,国道157号線の地点(手取ダム付近の桑島隧道)では,トンネル内部の歩道の土(出入り口から1〜130m,自動車白線から10〜90cm,車道からの高さ0〜22cm)からは微量(26〜84ng/g)のPd及び歩道の隅にたまった泥から微量(230ng/g)のRhが検出されたが,Ptは<8ng/g(検出限界)であった。このように,環境中から微量のPdとRhが検出され,Ptは検出限界以下であったが,環境中での動態については不明な点も多く,今後の研究課題である。
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