研究概要 |
ICP質量分析計からの元素の放出,ならびにゼロエミッション化達成のために必要となる減圧ヘリウムICP-MSに関して,以下の研究を行った。 ICP質量分析計からの元素の放出 プラズマ上方の排熱ダクトを通って大気中に放出される元素を捕集するため,ポリカーボネート製メンブレンフィルターを用いるサンプリングシステムを試作した。フィルターを減圧濾過用ホルダーに装着し,ホルダーの中心部を通るように固定した金属製パイプ(内径2mm)の端をダクト中央部に挿入して一定時間ポンプで吸引した。捕集済みフィルターを0.1M硝酸に浸し,超音波を照射して試料溶液を作成した。試料溶液中の目的元素(Yb)を黒鉛炉原子吸光分析法により定量したが,ピークが検出されず,元素の放出の有無を断定するには至らなかった。これはポンプの吸引量の制約から内径の小さなパイプを用いたことが一因と考えられため,今後この点を改善し,元素の放出を定量的に明らかにする必要がある。 減圧ヘリウムICP-MSに関する研究 プラズマへの溶液試料の連続的な導入が困難であったため,研究室試作の超音波ネブライザーによる導入を試みた。生成した試料エアロゾルは,ヒーター及びコールドトラップに搬送して水分を除いた後,プラズマに導入した。試料導入システムとプラズマとの間に挿入したキャピラリーによって,大気圧下でのネブライザーの操作と試料の安定な導入が可能になった。また,ラングミュアプローブによるプラズマ診断を行い,減圧ヘリウムICPの特性をアルゴンICP(減圧及び大気圧)と比較した。その結果,減圧ヘリウムICPの電子温度はアルゴンICPよりもかなり高く,イオン化しにくい元素でもイオン化率の向上が示唆された。減圧ヘリウムICPは,大気圧アルゴンICPに比べて分析特性の点で遜色がなく,ゼロエミッション化のためのICP-MSのイオン源として有望と言える。
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