研究概要 |
代表的な生分解性高分子であるPLLA、PCLは開環重合によって得られる。ホモポリマーの種々の物性を調節する上で、ランダム共重合は非常に重要な手法である.均一組成のランダム共重合体は組成が連続的に変化する通常の共重合体に比べて,より少量のコモノマーによって物性の調節が可能であることが期待されるが,開環共重合においてはこのような均一な組成の共重合体は通常得られない。 本研究においては、解重合が優先するためにホモ重合性に欠けるモノマーをコモノマーとして選択する平衡開環共重合により均一組成ランダム共重合体の合成が可能であることを理論的に証明し、ε-カプロラクトン(CL)/γ-ブチロラクトン(BL)系および、CL/THF系において実証した。さらに高結晶性で溶解性に乏しいポリグリコール酸の改質をめざして,グリコリド(GL)とBLとの共重合を検討し,これらの系で,モノマーの転化率に組成が影響されず,均一なランダム共重合体が得られることを明らかにした. CL/BL系においてはオクチル酸スズ/n-ブタノールを用いるアニオン共重合で,BL初期濃度を増加させることにより,BLユニットの含有率は8%まで増加させることに成功した.CL/THF系のカチオン共重合(トリフルオロメタンスルホン酸メチル,110℃)では,同様にTHF初期濃度を増加させることにより,THFユニットの含有率は50%まで増加した.一方,GLはホモ重合性が高く,アニオン共重合によるBLユニットの導入率は3%までであったが,カチオン共重合では15%まで上昇した. CL/BLの均一組成共重合体は不均一組成のものに比べて、結晶化度は大きくは変わらないものの、球晶サイズが小さく,また融点は低い.このため酵素分解が早く進行する傾向にあることが見出された。これはコモノマーが均一に分布しているためにPCL結晶部の不完全さがより高いためである。
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