研究概要 |
キラルカッリクスアレーンを母体とするカテナンを収率38-80%という非常に高い収率で得ることができた.対アニオン交換した分子も容易に調製でき,カテナンの動的挙動をVT NMRで調べたところ,ビピリジニウム環の挙動に大きな変化が認められ対イオンがカチオン近傍にいる場合と弱いイオン対の状態になっていることがわかった.ハロゲンを対イオンとして検討した初めての例であり対イオン選択を考える重要性がわかった.光学活性カリックスアレーンを用いてエナンチオマーであるカテナンの合成も収率61%という高収率で達成できた.円二色性スペクトルで温度効果を検討したところ変化が小さく,外部からの添加物による効果を検討する必要があることがわかった.また,鎖長変化がキラリティーに与える影響についても興味が持たれる.ロタキサン構造とするためカルボニルやピリジン環を有するポリエーテル鎖をキラルカリックスアレーンに導入した.ただ,ロタキサン構造を目指したため比較的長いポリエーテル鎖を設計したためかあまり良好な収率で環状分子を得られなかった.今後の課題である.得られた化合物でピリジン環を有するカリックスアレーンは金属イオンと顕著に相互作用することが明確になった.特にバリウムイオンに高い選択性を示した.他の金属にはほとんど相互作用を示さないことがわかった.一方,カルボキシル基を有するカリックスアレーンは有機分子の取り込みを起こすことがあきらかとなった.アミン関連化合物に対し高い相互作用を示す.今後他の官能基についても検討したい.
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