研究概要 |
シリカとアルミナを主成分とする複酸化物のゼオライトはイオン交換能を有し,また多孔質であることから,その内部空間を反応場として利用できる可能性がある。我々は,最近,銅イオン交換したゼオライト(ZSM-5型)が室温でも窒素分子を強く吸着し,一価の銅イオン種(Cu^+)が窒素分子に対する吸着サイトとして働いていることを明らかにした。このようなゼオライトの吸着特性を活用すれば,窒素の分離や固定化に利用でき,さらに新規な機能を有する物質をゼオライトの細孔内に合成して,反応サイトおよび反応物質としても利用できることが考えられる。本研究では,プラズマや光励起を利用してゼオライト中に窒素化合物を合成し,窒素と反応したサイトの状態およびその窒素化合物の反応性を明らかにするとともに,ゼオライトを反応場とした新しい触媒材料の開発・創製に対する指針を得ることを目的とした。 本研究の結果,銅イオン交換ゼオライト(CuZSM-5)の調製において,イオン交換溶液に含まれる対イオンの種類によって調製試料の窒素吸着能が異なり,なかでもカルボキシラト(-COO)を含んだ溶液を用いて調製したものが窒素吸着特性に優れていることがわかった。また,プラズマ励起した窒素が活性化され,室温でゼオライト表面に極めて強く吸着される(この種は573Kで真空引きしてはじめて脱離する)ことも明らかにされた。さらに,銀イオン交換ゼオライト(AgZSM-5)を調製し,これを紫外光励起することにより,ゼオライト中に10原子程度の銀クラスターが形成されることを明らかにした。そして,この銀クラスターと銀イオンの共存が触媒反応(メタンの部分酸化)において必要十分条件であることもわかった。 これらの研究成果の一部は論文として既に学術雑誌に発表(2報)し,さらに,2篇の論文を投稿中である。
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