研究概要 |
天然の生体分子に代わる人工レセプターとして、人工的に分子認識能を賦与したモレキュラーインプリントポリマー(MIP)が注目されている。本研究では、分子認識にMIPを利用し、検出用トランスデューサとして電極を用い電気化学測定する測定システムを構築することを試みた。レセプターMIP調製には、鋳型としてCATを用い、機能性モノマーとしてメタクリル酸(MAA)、架橋性モノマーとしてBDMAを使用して調製しCATおよび他のトリアジン化合物の結合特性を、CATを加えずに調製したNon-MIPと比較して調べた。 まず、分子認識に関するNMR測定を、MAAのカルボキシル基、およびCATのアミノ基についてDMF,クロロホルムの両溶媒で行い比較した。その結果、クロロホルム、DMFいずれの溶媒中でも、カルボキシル基のプロトン、およびアミノ基のプロトンのケミカルシフトは、CATに対するMAAの比率が上がるにつれて一定方向に変化し、MAA/CATが7程度までは変化し続けたが、これ以上では変化が見られなくなり、7程度で両者の結合が飽和することが分かった。次に両溶媒中でCATに対するMIPを調製した。クロロホルム中で調製したMIPでは、CATの結合にNon-MIPとの差が見られなかったが、DMF中で調製したものでは、CAT-MIPにより多くのCATが結合した。CAT-MIPの選択性評価は、CAT, Atrazine, Propazineの3種類の除草剤に対し、CAT-MIPからNon-MIPの結合量の差を比較して行ったところ、結合量は、CATが4.8%、Atrazineが1.8%、Non-MIPより多く、PropazineではNon-MIPと同等だった。従ってCAT-MIPはCATを対して特異的な結合させるが、Atrazine, Propazineは非特異的に吸着していると考えられる。また、AtrazineやPropazineの結合はCATより少なく、CATを選択的に結合させることが示された。また、CATの電気化学測定についても、これまで使用してきた金電極に加え、水銀と金のアマルガム電極についても検討した。アマルガム電極は、還元側に電位窓が金に比べて広いため、金よりも明確に還元電流が測定でき、CATに対する応答電流も大きくなることが確認できた。
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