研究概要 |
生長に必要な鉄の細胞内への取り込みは,一般的な細菌から病原性細菌に於いて幅広く見られる現象である。従って,新規な細胞観察用蛍光プローブを開発することは,鉄取り込み機構の解明のみならず病原性細菌の研究を通した医薬品の創製に於いて必要不可欠である。本研究では、新規な蛍光性2座および三脚型6座配位子を合成し,鉄錯体形成による消光と配位子解離による蛍光の回復,すなわち蛍光のON-OFFを利用し,菌体を用いた鉄取り込みの蛍光顕微鏡を用いた直接観察を目的とした。 この2年間の研究で,以下のような成果が得られた。1.6-アミノ-2,3-ジモルホリノキノキサリンに3-ヒドロキシ-4(1H)-ピリジノンが直結した新規な蛍光性2座配位子(a)およびカテコールがメチレンを介して結合した蛍光性2座配位子(b)を合成した。2.L-プロリナールを用いた還元的アルキル化反応により蛍光性の光学活性キノキサリン(c)を合成した。3.6位と8位にアリール基が置換した蛍光性イミダゾピラジン(d)を合成した。4.蛍光性三脚型6座配位子は中間体の溶解性が予想以上に低かったため合成できなかった。5.蛍光性2座配位子(a)はFe(III)と3:1錯体を形成すること及びFe(III)の添加と共に著しい静的消光が起こることがわかった。また,強力な鉄キレーターを添加すると蛍光が回復することもわかった。6.2座配位子(b)では塩基性条件下でカテコール部位からキノキサリン環への分子内電荷移動に基づく吸収帯が観測された。7.光学活性キノキサリン(C)は高感度な光学純度決定試薬に成り得ることが明らかとなった。8.イミダゾピラジン(d)は活性酸素の一種であるスーパーオキシドラジカルアニオンの高感度検出だけでなくpHセンシングも同時に行えることが明らかとなった。
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