研究概要 |
我々が見出したCeSn_3やLaSn_3は,次世代のリチウム二次電池負極材料として有望であるが,第1サイクルの容量可逆性とサイクル安定性に乏しい.本研究では,電極特性の改善を図る目的で,メカニカルアロイング(MA)を用いてこの合金に機械的にリチウムを添加してみた.その結果、特にLi_<1.7>CeSn_3の組成の電極で,容量可逆性がほぼ100%に達することが見いだされた.また,サイクル安定性も改善された.他方,LaSn_3についても同様のことを試みたが,この電極についてはサイクル寿命評価におけるコイン型セルの有用性についても調べた.まず,コイン型セルとビーカー型セルではほぼ同等の初期放電容量を示すことがわかった.また,ビーカー型セルを用いた場合はサイクル初期の時点で急激に容量が低下したが,コイン型セルではそれが認められなかった.Li_xLaSn_3電極の容量可逆性もLi添加で改善され,特に,x=2の電極においてほぼ100%の効率を達成できた.またこの電極においては,放電容量が25サイクル目においても1サイクル目のそれの約95%に相当していることがわかった.このような電極特性改善の理由を考察するために,この電極の充放電機構を電気化学的測定に加えてX線や中性子線をプローブとした構造解析を行うことから推察した.結果として,容量可逆性の向上は機械的なLi添加により活物質相の結晶子サイズが減少したためと考えた.これにより活物質粒子内のLi拡散距離が短くなり,粒子深部に到達したLiも容易に放出されるようになったものと思われる.他方,サイクル安定性の向上は,活物質が微粒子化され,Li-Ce-Sn化合物マトリックス中に分散されたことが体積変化に伴う応力を緩和したためと考えられる.
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