研究概要 |
有機ELディスプレイの開発の一環として,多波長発光(白色)有機EL素子について研究を行った。素子の白色化には,(A)ホストに1種類のゲスト分子を添加する方法,(B)異なる発光波長をもつ2種類以上のゲストを共添加する方法,(C)異なる発光波長を示す2つ以上の発光層を積層する方法,が考えられる。この3方法について,有機EL素子を用いる場合と,ガラス基板に蒸着またはスピンコートした単層薄膜を用いる場合の両者について,吸収発光スペクトル測定およびエリプソメトリ測定などを10-300Kの温度範囲で行った。A方法として,緑色発光Ir(ppy)_3をCBPやTPDやポリスチレンに添加したものや,赤色発光PtOEP,青色発光TPDを添加したものを用いた。燐光分子では,燐光以外に短波長側に蛍光を低温で観測した。しかし強度は燐光に比べて弱い。強度を上げるために最低三重項準位T_1のエネルギーの異なるホスト分子を用いた実験を行い,強度の増加を得た。TPDやCBPのような蛍光分子ゲストの場合,燐光を低温で観測しその強度を上げるためにホストの選択に工夫を行った。B方法として,TPDホストにIr(ppy)_3とPtOEPを共添加して調べ,それぞれの強度は,それぞれの濃度比率とホスト材料と温度に強く依存することが明らかになった。量子力学を用いて定量的解析を行い,実験結果を説明することができ緩和発光過程を明らかにした。C方法として,赤色発光層と青色発光層を隣り合うように積層した有機EL素子について調べた。ホストは同一の蛍光分子を用いた。それぞれの発光強度が,ITO電極側近くに赤青いずれの層を積層するかにより,また膜厚により,異なることを観測した。その理由について解析を行った。実験結果に基づいて定量的解析を行うことにより,高効率白色有機EL素子開発への指針が得られた。
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