研究概要 |
本研究で得られた成果は以下の3項目にまとめられる. 1.粘土鉱物(モンモリロナイト)分散液の誘電緩和・音速・ゼータ電位測定と吸着実験を行い,粘土表面の水和状態に対する対イオン種の効果とカチオン界面活性剤の吸着挙動を検討した.モンモリロナイトは水中では膨潤してよく分散するが,カチオン活性剤を添加すると表面負電荷が打ち消されて凝集・沈降する.この時の活性剤の吸着量は数時間以内で極大を示し,その後減少して平衡値に至った.吸着除去剤としての使用にはこれらの時間変化挙動を踏まえる必要がある. 2.タンパク質や糖型界面活性剤の乳化作用とエマルション安定性を調べた.まず,牛血清アルブミン(BSA)やβ-ラクトグロブリン(β-Lg)を乳化剤としたO/Wエマルションの安定性を詳細に調べ,BSAの方がβ-Lgよりも安定なエマルションをつくること,BSAの乳化作用は等電点近傍で著しく減少するが塩添加により回復する場合があることを見出し,分散安定性を支配するのは基本的には油滴間静電相互作用だが,吸着タンパク質膜の力学強度も影響を与えることが解った.更に,オクチルグルコシド,ショ糖ラウリン酸エステル,グルコースオクタン酸エステル,アロースオクタン酸エステルの臨界ミセル濃度と表面過剰量を決定し,コーン油エマルションを調製してその分散性を評価した. 3.陽イオン界面活性剤水溶液中でのポリスチレン(PS)粒子とシリカ基板間の表面力を調べ,活性剤吸着に伴う電気二重層斥力の増加や高分子層による特徴的な振る舞いを確認した.また,スピンコートPS膜について分光偏光解析で調べ,純水中で膜厚0.5nm,含水分率22%のPS膜に陽イオン界面活性剤が加わると一分子層程度量の吸着が検出されるが,高分子の剥離による膜厚減少がみられる場合もあり,スピンコートPS膜はかなり不安定なことが確かめられた.
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