研究概要 |
まず最初に科学研究費申請書で提案した、高分子の2段目の延伸条件(温度、速度、張力、試料とヒーターの接触長さ)が正確に制御できる高温ピン延伸装置を試作した。次いで、この装置を用いて、主としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)重合体粉末の2段延伸を行ったが、溶融高分子量ナイロン6,超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリ-L-乳酸の延伸も試みた。 PTFE重合体粉末を融点以下の温度で圧縮成型して得られたパウダーフィルムは脆くて引張延伸することは出来ないが、(1)圧力下、325℃(融点直下)で6-20倍に延伸(実験室では固相共押出、連続プロセスではロール圧延)すると初期のPTFE粉末集合体が配向フィブリル構造に変化し、その結果優れた延性を発現する(1段目の延伸)。次いで、(2)この配向フィルムを室温から500℃(静的融点より165℃高い)でピン延伸を試みたところ(2段目の延伸)、(1)延伸温度T_d=45-100℃で延伸比(DR)【less than or equal】50に延伸できたが、(2)T_d=100-335℃(融点)では延伸不可能であり、(3)静的融点以上のT_d=345-430℃(静的融解温度より10-430℃高温)ではDR=240-500に延伸することができた。この様な超延伸テープは、結晶化度約88wt%、結晶性分子鎖の配向関数f_c=0.997、大きな結晶サイズ(分子鎖に平行方向D_<0015>及び垂直方向D_<100>の結晶サイズは、それぞれD_<0015>=100-150m, D_<100>=65nm)であり、ヤング率は24℃および0℃においてそれぞれ122±2GPaおよび155±3GPaであり、後者は結晶弾性率の90%に対応している。この様に高いヤング率を有するPTFE延伸物は、これまでに報告されたことがない
|