研究概要 |
本研究では最も基本的な構造としてInAs/GaAsヘテロ構造を取り上げ、GaAs基板上にGaAs/InAs/GaAs量子構造を作製することを試みた。GaAs(001)面では格子不整合のため三次元成長になるが、比較的早く緩和が進み二次元成長するといわれているGaAs(111)A面上でInAsを成長した。GaAs(111)A面上のInAsにおいては、電気的特性は報告されているが、光学的特性はまだ報告例がない。最初GaAs/InAs/GaAs(111)A量子井戸構造を作製し、低温(10K)でのフォトルミネッセンス(PL)測定により評価した。これまで、GaAs/InAs/GaAs量子井戸構造のInAs井戸層からのPL発光は観察例がなく、本研究により初めて観察された。InAs井戸層が1.5ML,3ML,6MLに対してそれぞれ1.45eV,1.41eV,1,36eVにPLピークが観察された。しかし、InAs層が厚くなるとInAsの結晶性の劣化のためPL強度は減少した。したがって、GaAs/InAs/GaAs量子構造の結晶性の高品質化を目的にGaAsバッファ層の上に(15nmGaAs/25nmAIGaAs)x10の超格子バッファ層を積層し、その上にGaAs/InAs/GaAs量子構造を成長させた。その結果、GaAs(001)およびGaAs(111)A基板ともにGaAs/InAs/GaAs量子構造の品質改善が見られた。 次にSQW構造からのPLエネルギーの実験と理論の比較を行った。実験値1ML-SQW:1.47eV,2ML-SQW:1.43eV,3ML-SQW:1.41eV,6ML-SQW:1.36eV,に対し計算値は1ML-SQW:1.468eV,2ML-SQW:1.372eV,3ML-SQW:1.282eV,6ML-SQW:1.099eV,となった。すなわち、PLエネルギーの実験値は計算結果よりかなり大きい値である。この原因としてIn原子の成長中の再蒸発と界面でのInとGaの相互拡散が考えられる。 本研究により半導体柱状量子構造の作製技術の基礎検討が行われ、半導体柱状量子構造の作製およびデバイス作製へ引き続き研究を進める。
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