研究概要 |
本研究によって高濃度イオン注入によって炭化シリコン中に形成された非晶質層の再結晶化過程への不純物効果について以下の知見を得た。 1.非晶質層の再結晶化過程への不純物効果について PおよびAlのようなSiC中で格子点を置換する不純物がイオン注入されることで形成される非晶質層がその後の熱処理によって再結晶化する場合、これらの不純物の導入によって、再結晶化速度の増加が起こる。再結晶化速度の増加は1x1020/cm3以上の場合に顕著であり、不純物がPまたはAlのどちらでも不純物濃度を1x1021/cm3まで大きくすることで、再結晶化速度は4倍まで増加する。これらの非晶質層の再結晶化速度の熱処理温度依存性においては、活性化エネルギーは、3.4eVである。ここで得られた活性化エネルギーは、SiC非晶質層が、3C,4H,および6Hに再結晶化する場合に等しい。再結晶化されるSiCの結晶構造と再結晶化速度を比較した場合、4Hが最も早く、6H,3Cとジンクブレンド結合の割合が大きくなるにつれて、低速となる興味深い知見が得られた。このことは、これらの結晶ヘイオン注入を行う場合に、熱処理条件の検討において重要である。 2.イオン注入されたリン不純物の電気的活性化 イオン注入されたP不純物は、非晶質層の再結晶化とともに格子点をすぐさまに置換し、電気的活性化すると考えられる。また、このメカニズムが再結晶化速度の増加する従来のモデルと矛盾なく説明できる。P不純物が注入されたSiCにおいて、高温での熱処理を行っても、P不純物から発生する電子の濃度に変化は観察されないことから、非晶質層の再結晶化の終了と同時にP不純物が格子点を置換することを確認できた。他の不純物として、N不純物をイオン注入により導入したSiCについても、結晶性の回復およびN不純物の電気特性評価を行った。
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