研究概要 |
本研究では耳栓装着を要するような労働環境において,耳栓を装着することにより騒音成分が低減され,音声明瞭度の改善を図れるのではないかとの観点から研究を進めた。 初めに高域周波数成分が優勢な騒音と高域の遮音特性に優れるJIS第2種の耳栓を組み合わせた音声明瞭度試験を実施した。聴取条件は騒音の音圧レベル65〜85dB,音声の音圧レベルは騒音と同等のレベルから10dB低いレベル(SN比0〜-10dB)である。この条件における単音節音声明瞭度試験の結果は,「耳栓装着の有無による音声明瞭度に差はない」ということであった。 次に,さらにひどい騒音環境を想定して,音圧レベル95dBのホワイトノイズ,音声の音圧レベル90dB(SN比-5dB)の組合せで音声明瞭度試験を実施した。この音圧レベルは耳小骨筋反射を生じ,聴力が低下するレベルである。使用した耳栓は広帯域に遮音するJIS第1種である。この条件における単音節音声明瞭度試験より,「耳栓を装着すると明らかに音声明瞭度が向上する」との結果が得られた。 これらの音声明瞭度試験結果をまとめると次のようになる。 1.耳小骨筋反射を生じるような高騒音レベルでは,耳栓を装着することにより聴力保護を図られると共に,音声明瞭度は改善される。 2.それよりも低い騒音レベルでは,耳栓装着の有無によるよる音声明瞭度の差違は見られない。このことは,聴力保護の観点から耳栓を装着しても音声明瞭度は低下しないことを意味する。 以上が本研究の成果である。必要な音声情報が聞き取りにくくなるのではないかとの危惧から,耳栓装着を躊躇していると思われる場があるが,そのような心配はなく,聴力保護具としての耳栓装着を積極的に奨めるべきである。
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