研究概要 |
第一に著者の提案していた一次元空間的投票モデルをゲーム理論で明解に再整理した.条件が一般化され既存研究との関係も明瞭になった.この結果を前提として,本研究の重要な貢献は,次の3点をまとめて完成できた点にある. 1.選挙区別得票データから,政党と各選挙区の製作位置を決定する手法を提案した. 2.その手法の計算上の技術的問題を解決した. 3.実証研究によって,この手法が現実に意味ある結果と対応していることを示した. この成功により空間的投票モデルの今後の実証研究による検証への道が開かれた.これは,空間的投票モデルにおいて画期的な意味を持っていると考えられる. すなわち,空間的投票モデルは,選挙理論における唯一の理論らしい理論として重きをなしていたが,現実に実証研究に利用するに必要な,政党と選挙区の政策位置を決定する合理的な方法に乏しかった.本研究での選挙区モデルは,そのままの形で選挙区での得票数から機械的に政策位置を決定することが可能である.この決定は超高次元多峰性関数の最大値決定問題となるが,工夫を重ねて我が国国政選挙の事例では実際に政策位置を決定することが出来た.この結果が有意味な結果を与えるか否かが鍵であったが,我が国においては右派対左派の対立軸以上に,都市対農村の対立軸が大きいことが分かり,既存実証研究と整合的な有効性が意味のある意外な結果が得られた. 科学の科学たるゆえんは反証可能性にあると言われるが,本研究を待って,空間的投票理論は反証可能性への道が開かれたことになる. 実証研究の整備として,我が国総選挙の市町村別得票数がデータベース化されていない回について,データの入力を完成させている. 広い意味で関連する結果として,ファイナンスでのオプション価格の実証的研究の結果等も得られている.
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