研究概要 |
ナノインデンテーション(超微小押込み)試験法は対象物に圧子で超微小荷重を作用させて,荷重-押込み深さ曲線から直接的に弾性率が測定可能であり,特別な形状の試験片を必要とせずに,対象物の微小領域組織の力学的性質が評価できる新たな材料試験法である.一方,骨診断としてDXA法は標準的な方法として位置づけられているが,DXA法では骨密度を面積骨密度(mg/cm^2)として評価している,これに対してpQCT法は単位体積当たりの骨密度vBMD(mg/cm^3)の測定が可能である.しかしながら,皮質骨のvBMDと力学的性質との関係について検討した研究例は極めて少ない.そこでウシ大腿骨6本およびブタ大腿骨5本を対象に押込み試験を行い硬さと弾性率を測定し,骨組織の微視的構造の違いによるこれら力学的性質の差異について検討した,その結果,従来の報告同様plexiform boneの方がHaversian boneよりも硬さおよび弾性率ともに高い値が得られた.また,硬さと弾性率の関係を全組織についてまとめてみると,両者の間には相関関係(相関係数r=0.74)がみられたことを明示した.さらには,皮質骨の骨密度と力学パラメータとの関係について検討した.骨の診断として骨密度を測定するのが一般的である.特に,pQCTは再現性がよく被曝線量が少ないことから最近注目されている.しかし,pQCTから求めたvBMDと力学的性質との関係について詳細に検討した例は見当たらない,そこで,週齢6〜40週のラット大腿骨72本を対象に,3種類の荷重で押込み試験を行うとともに,pQCTによりvBMDを測定し,vBMDと硬さおよび弾性率との相互関係について明らかにした.その結果,vBMDは6〜40週齢の範囲で週齢とともに増加し,硬さとの間にr=O.85〜0.90,弾性率との間にr=0.62〜0.76と正の相関関係が見られたこと等を明らかにした.
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