研究概要 |
破面接触を考慮した残留応力下の疲労き裂進展寿命予測を行うと伴に,疲労き裂進展実験により得られた破面のフラクタル解析による定量評価を用いて,寿命推定法の検証を行いその適用性を調べることを試みた.以下に成果の概略を示す. 1.実験に関する主な成果 (1)SM材に対し,残留応力に対応する応力比Rを変えてき裂進展実験を行い,破面の接触状況をSPMを用いて観察した.それらのデータを用いてフラクタル解析を行い,フラクタル次元Dを求めた.その結果,R値の増加に伴いD値が小さくなる相関関係が存在することが解った.しかし,それらの依存性は小さく,寿命推定に用いた場合には,誤差が大きくなると判断された.更なる研究が必要と思われ,また,それに伴い,種々の破面に対するD値の収集も必要と考えられた. (2)種々の破面に対するD値の収集のため,過去のSUS304材に対する真空及び大気中における高温疲労き裂進展実験の試験片破面に対し,フラクタル解析を行った.その結果,環境及び温度に対して,それらの破面のD値は明瞭な相関を持つことが解った.また,Ni基超合金材に対しても同様にフラクタル解析を行い,両環境の破面共にフラクタル性が存在することが解った.また,他の破面解析も試みた.平均二乗偏差解析では,き裂の進展方向とそれに垂直な方向を明確に区別することができた. 2.シミュレーションに関する主な成果 残留応力場中の斜め表面き裂,円孔に向かう斜め隅き裂,及び円孔縁から進展する斜めき裂に対し,破面接触を考慮した場合とそうでない場合の疲労き裂進展シミュレーションを試みた.その結果,破面接触によりき裂前縁各点の疲労き裂進展速度および方向が変化し,き裂前縁形状も変化する場合があることが示され,また,「U予測による寿命推定法」と「Δσ_θ最大説」とを組み合わせた三次元き裂の疲労寿命推定法の適用性も証明された.
|