研究概要 |
本研究では,マグネシウム合金(AZ31)切削チップの再利用を見据え,マグネシウム合金の切削チップにAlおよびZnを加えたMg-Al系,Mg-Zn系金属間化合物に注目した.AZ31合金にはAlと亜鉛が含有しているので,マグネシウム合金切削チップにアルミニウムと亜鉛粉末を加えメカニカルアロイング(MA)し,軽量でかつ高温高強度のマグネシウム合金を開発するとともに,この合金の耐摩耗性と耐食性についての環境強度特性を明らかにした. (1)MAによる合金化過程に関する研究:マグネシウム合金(AZ31)系切削チップとアルミニウムおよび亜鉛粉末を種々の配合組成で混合し,MAすると,Mg-AlおよびMg-Zn二元系ではアモルファス相に近いナノ結晶の金属間化合物が生成する. (2)MA合金の熱的特性に関する研究:MAで得られた合金粉末は熱処理によって熱的に安定な金属間化合物となり,機械的強度が高くなる. (3)MA合金粉末の固化成形と成形体の機械的強度特性に関する研究:マグネシウム合金粉末をホットプレスによって固化成形する成形条件を調べた結果,適正な条件下であれば,緻密な合金金となり,粒子間結合も高い.したがってMAのマグネシウム合金は高硬度・高強度の合金となるが,延性は乏しい. (4)MA合金粉末とマグネシウム合金の接合に関する研究:マグネシウム合金表面にMA合金粉末を層状に積層して圧延と単純圧縮変形によって接合すると,拡散機構によって接合し,MA合金の特性を有するマグネシウム合金に表面改質することができる.そして,マグネシウム合金を型鍛造する際に,フランジ部や突起部などにMA粉末を圧縮接合して,型鍛造品の局部的な表面改質に成功した. (5)マグネシウム合金の環境強度特性に関する研究:MA合金粉末を用いて表面改質したマグネシウム合金は,焼入れ鋼に対する摩擦係数が高く,摩耗量は少ない.したがってブレーキ材料のような制動特性に適した合金となる.さらに耐海水性も改善され,軽量・高強度で,かつ耐食性も優れたマグネシウム合金となる。
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