研究概要 |
1.通常の窒化処理温度565℃における廃メラミン樹脂粉末の窒素成分は,メラミン樹脂の原料粉末のそれより約30%多く,分解点も57℃高いことがわかった。 2.廃メラミンを用いた565℃,1〜3時間の処理において,SUS304ステンレス鋼板の表面には化合物層,その下には拡散層が形成され,これらの層はメラミン量,処理時間の増加につれて増加した。しかし,拡散層の厚さは処理条件にかかわらず,化合物層のそれより少ないことがわかった。 3.SUS304鋼板の表面においては,CrNやFe_3Cが同定され,表面硬さは1000HV以上を呈した。表面から深さ方向の元素分析では,化合物層中には高い濃度の窒素と炭素が固溶され,その度合は窒素において顕著であった。一方,拡散層中ではそれらの固溶はともに微量であったが,その量は炭素において多く認められた。 4.SUS304鋼の潤滑下における耐焼付き性および耐摩耗性は,廃メラミン窒化により格段に向上し,また摩擦係数も0.12と低い値を示した。 5.廃メラミン窒化したSUS304鋼の疲労強度は,無処理材の場合より約1.5倍向上し,疲労寿命も著しく延伸した。 6.廃メラミン窒化は低温処理が可能であり,420℃の処理においては,SUS304鋼板の表面には拡散層のみを形成させることができる。このことはSUS304鋼において耐食性を損なうことなく,耐疲労性の向上が期待できる。 7.メラミン窒化で処理したパンチ(SKH51)およびロールカッター(YXR7)において,これらの寿命は焼入れ焼戻しの場合に比較して,2倍以上増加することが確かめられた。 8.廃メラミン樹脂は高い窒化能を有し,鋼の種類にかかわらず容易に窒化が施され,固体窒化用の資源として効果的に再利用できることが明らかになった。
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