研究概要 |
従来の直交シリアル構造の工作機械に対して,まったく異なった回転ジョイントとリンクを用いたパラレルメカニズム構造の工作機械が提案されているが,期待に相違してエンドユーザーで実用に供されているものは世界全体を見渡しても数少ない.パラレルメカニズム型工作機械は従来の機構と比較して剛性が低く,運動精度も劣る場合が多いことが原因のひとつと考えられる.パラレルメカニズム型工作機械の運動精度を動作制御の観点から改善することを目的として,以下の研究を行った. 1.重力による部材の変形が及ぼす誤差の補正システムの開発 主軸ユニットを6本のストラットのみで支持するパラレルメカニズム型工作機械は,重力による部材の変形が位置決め精度に与える影響が大きく,またその影響は主軸の位置・姿勢によって大きく変化する.このような運動誤差をより正確に予測し,補正するためのパラレル機構の力学モデルを改良した. 2.機構パラメータのキャリブレーションシステムの改善 パラレルメカニズム型工作機械の高精度な動作制御のためには,ストラットの基準長さ,ジョイントの位置などの機構パラメータを正確に同定することが必要不可欠である.それらのパラメータのキャリレーション法として,円弧運動試験に基づく手法がこれまでに提案されている.本研究では,キャリブレーション時に特に重力の影響を除去し,機構パラメータのキャリブレーション誤差のみを抽出する手法を提案した.1.及び2.の結果として,従来パラレル機構の可動範囲の端に近く,主軸のチルト角が大きい条件では真円度で200μm程度存在した運動誤差を,可動範囲のほぼ全域で20μm程度まで低減することができることを確認した.
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